今、彼のニットウエアーは世界の衣料界、テキスタイル界の重要なコレクションに数多く見られ、そのデザインは世界の有名人からも数多く賞賛されている。
又、彼は英国・アメリカで非常に多くの編物講習会を開き、好評を得ている。
手芸というものの数多くがそうであるように、編物は私達の生活の中に魔術を生み出す力をもっています。
モザイクづくり、木彫り、タペストリーなどすべては、私達の生活を明るくするために日常の家庭用具をありきたりのものから高尚なものに引き上げることができるのです。
そのかわり、これらのものは単調で面白みのないものになるという反対の結果をもたらすこともたびたびあります。



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私は自分の講習会で『あなた方は本当に美しいもの、何か人生の価値を高めるものをつくることができるのですよ。』と、すすめていますが、そのたびに、『それはあなたが芸術家で、色についてご存知だから言えるので、色というものについて知らない私達にはどうも。』という反論をいつも受けています。
このあやまった考え方が、私にこの本を書かせた大きい理由の一つです。

色彩に対する感覚というものは、無意識のうちに知ることのできるものではなく、色に接することによって、とりわけいつも色を見つめることによって、色がもつ秘密を発見したり再発見したりすることができるものだということを知ってほしいと思います。私の柄のいくつかをくわしく紹介すると同時に、私は、特にこれらのデザインがどうしてできたか、即ち、色と形に対するひらめきで私が試してみたことを特にお見せしたいと思います。
あなた方が自分で自由に想像して、そして、独自なものをつくりだすことができるように、この機会にあなた自身挑んでみられることを熱望します。

私の編物の世界との出会いは『無知は幸せ』の生きた見本のようなものでした。
もう一人のパートナーはリチャード・ウォマースリーで、彼のすばらしい色彩感覚は私のデザイン開発に、いつも力となっています。この本の写真を担当していただいた鋭敏な目の持主、スティーブ・ロヴィは、私の作品の多くに対して感性豊かなアドバイスをしていただいています。
このような知覚のするどい有能な人達から、たえざる力添えを得られることは、私にとって多いなる幸せであると思っています。

これらのデザインのいくつかは、複雑で大変な労力を要するようにみえることは私達だれにもわかっていますが、うれしいことにほとんどの編み手さんはこの複雑さが単なる勘違いにすぎないことを発見されます。
多くのデザインは全く未経験の編み手さんによっても、上手に仕上げられています。 作品を仕上げるだけの忍耐を持ち合わせていないと心配する人がよくあります。しかし、ほとんどの場合、色彩豊かな作品が形を現わしてくるのをみると、これとは反対に、編むことをやめるのが難しいことになってしまうのがおわかりいただけると思います。

私達はみんな本当に良いものをつくろうという基本的な欲求をもっているものです。もし、色彩感覚の編物が自己表現の特別な方法だということがわかれば、その時あなた方はすばらしく価値のある、わくわくするような旅に出発することになるのです。 28才までのほとんどを私は、静物画と肖像画の画家として過ごし、それまで編物とは全く無縁でした。
私はよく絵の対象とする静物の中にすばらしい織物や刺繍をみつけ、それにのめりこんでゆくことがたびたびありました。そして、それらが一体どのようにしてつくられたのか不思議なほどでした。

1960年代の初め頃には、芸術家というものは手芸などには手を出すものではないという風潮がありました。
しかしながら、インベルネスにあるホルムズ社を私の友人ビル・ジブと生地仕入のために訪ねたとき、とうとう私は自分を抑えることができませんでした。
工場の裏手においてある糸が目を見張るほどきれいで神秘的で、私は、もはや自分を抑えることができない程でした。そして、その場で私は、20色の糸と何本かの編針を買い求めました。
汽車に乗るまでずっと私は、この色でつくることのできるすばらしい作品づくりを依頼する編み手さん探しを考えていました。どうしてみつければよいか、本当にできるだろうか、と。
この方面についての知識を、私は殆ど持ち合わせていませんでしたし、又、探し出すのに長い時間がかかるに違いないと考えていました。

次第に、私はこれは自分で編んでみなければならない、自分なりにデザインしてみなければならないと考えるようになっていました。
幸いにも、ロンドンに帰る車中で私は編物の上手な一人の婦人に出会い、目どり、編み方、裏編みなどについて教えてもらうことができ、熱中したのです。
それから数週間私は朝6時に起きて編みつづけ、とうとう20色をつかった私の最初の作品であるカーディガンを編み上げました。

それから数年間、単色使いの作品でほとんどの人をウンザリさせているように思える多くの編物のルールを私は無視しつづけました。
編段中央に結び目をつくったり、もっと難しいものをと、一段の中に20色の色をつかったりして、色と糸を組み合わせて私は楽しみました。私が出会ったタイル張りの床、古代のカベ、カーペットなど、こうしたものに私の感性を注ぎ込み、それらを編物のデザインに変えて行きました。
それからの15年、私はどんな旅行先でもすばらしい色のいろいろな糸を集めましたが、いつも私自身の色をつくることを夢見ていました。

そうしているうちにヨークシャーにあるローワン・ヤーンズのステファン・シアードと知り合いになりました。
コットン・シェニールとツィードヤーンの色を決めてみてわかったことは、それらの糸を使うためにはパターンなりデザインを考えることが必要であるということでした。ここから私はニットパックを考えついたのです。

平均レベルの人は多色使いで難しく見えるものには取り組めないと多くの人が心配していました。
私の経験から、この点については何も恐れることはないと知っていましたので、私はこのことを広く知ってもらうために一連の講習会を始めました。
私の週末の講習会で平均レベルの人が編物のルールを窓から放り捨て、25色使いの見事な詩のような作品をつくりだすと、熱心さが頂点に達することがよくあります。

私の講習会のデザインが成功をおさめているのはゾェ・ハント氏に負うところが大です。作品の形どりと編み方についての技法に多大の力添えをしていただきました。